<7月16日(日)>


朝7時過ぎに爆睡から目覚めると、かやのんちさんは既にいなかった。柿の種さん曰く、4時頃に起きて帰ったそうだ。
私は、朝ご飯のナスの味噌汁に、去年採ったモズクを入れてあげた。親不知モズクは、冷凍物であってもヌメリと風味は残り、充分美味しいので、おもてなし用に保存してあるのだ。

テレビの天気予報では、今日も引き続き梅雨前線が停滞し雨模様の一日となるでしょうと伝えている。外は相変わらず雲が低く垂れ込め、昨日からの雨はいっこうに止む気配を見せない。
この天気じぁ今日も海に入れそうもないなあ、どうしようか・・などと話ながらモズクを啜っていると、玄関で"おはようございます"という声がした。
朝から誰だろう・・本家の父ちゃんかな?・・などと思ってると、

「昨日はご馳走様でした。」
何と、かやのんちさんではないか。

「あれ?草刈はどうしたの?」
「今朝、行って終わらせて、とんぼ返りしてきました。」
ええ?!、・・ということは今日はもういいの?」

いやいや、たいした男だ。
えらい! ねぎらいに、モズクの味噌汁を出してあげた。


そうしている間に、macさんから電話が・・・
「今日も雨だなあ・・・これから“石の博物館”に行こうかなと思うんだけど・・・」
「フォッサマグナミュージアムだね。」
「・・って言うのか?、まあとり敢えずそこで落ち合うことにしよう。」
「了解、今行くよ♪」

この連絡をつけた時点で、今日も海に潜るのは、殆ど90%無し、という方向に近付いていた。



● ヒスイの誘惑

糸魚川静岡構造線は、日本のど真ん中を縦に走る大断層だ。
(正確には違うが、大まかな意味でフォッサマグナとも呼ぶ。)
その断層の上に位置する糸魚川は、日本一、石(鉱物)の種類が多い、という事はあまり知られていない。
その数ある鉱物のなかでも、ダイヤモンドの次に硬いヒスイ鉱石の原石が、小滝川(姫川の支流)と青海川に露出しているところをヒスイ峡という。
そのむき出しの原石は、天然記念物に指定されている為、現在では川原一帯が立ち入り禁止となっている。
しかし、太古の昔から鉄砲水などで川が氾濫する度に、その原石の"かけら"が流れ出る。やがて長い時を経て河口に出て、今度は日本海の荒波に揉まれてその辺の浜にうち上げられる。それでこの辺りの海をヒスイ海岸と呼んでいるのだ。
柿の種・かやのんちの二人は、このヒスイを拾う為に、今年になってからもう何度も糸魚川・青海の浜をウロウロしているのだ。



(ヒスイふるさと館に展示の
世界最大の輝石岩)


ヒスイ宝飾品
前日、ホテル糸魚川にチェックインを済ませに行っている間に、前庭の飾り石を撫で擦りながら、なにやら訳のわからないマニアックな会話を交わす、柿の種&かきのんちの両氏。

さりげなく置かれている、この原石にも、ヒスイが混じっているみたいだ。
しばしのヒスイ談議、というか、事前講習会というか・・。

柿の種・かやのんち両氏の、言葉巧みな誘導によって、翡翠ロマンのあやしい世界に引き込まれ、今まさに拉致されんとするmac3氏。

糸魚川市街地から少し登った丘陵地にある、フォッサマグナ・ミュージアムに着いた頃から、また雨が降り出してきた。
風はさほど無いので、昨日ほど寒くは無いのだが・・・。
このミュージアムは、私自身2回も入っているので、ロビーでお茶でも飲みながら、今日の予定を考える事にするか・・・。

それにしても、部落の仕事をしに今朝帰ったはずの、かやのんち氏が、なんでまたいるんだ?と、不思議そうなmac3氏に、彼は一生懸命事情を説明していた。ひょっとしたら最初からここに来るつもりだったのかなあ・・・(笑)。
フォッサマグナミュージアムに展示してある、“石” の数々。ほんの少し紹介。(各氏撮影)
      

しばし石の勉強をして出てきた彼らに、ロビー横の航空写真を使って、忠右ヱ門や昨日行った雨飾温泉、それから小滝のヒスイ峡などの位置関係を解説しながら、さあ、今日はこれからどうする、という話になった。

せっかく石の勉強をした事だし、よしんば海には入れないにしても、浜でヒスイ探しでもしようか。
という事に。それならばと、親不知の砂利浜へと向かった。
 

● 雨中決死隊

ミュージアムから約20分ほどの行程の途中から海沿いを走り、親不知の断崖絶壁が近づくにつれて、次第に雨足が速くなってきて、天剣ホテル前に着いた時には、その雨はいっそう強さを増していた。
しかしこの時すでに私は意を決していた。親不知の核心部に近づくと、割合に水が濁っていないし、波も比較的静かだったからだ。

「どうする?」
というmacさんの問いに、私はきっぱりと
「潜る!」と答えて支度を始めた。sonetaさんはじめ新人二人もホントに?と、あっけにとられた様な表情だった。私が潜ると言ったので、macさんはどうしようかな・・と自分の車の方に戻ると、何とじょしゅさんが支度を始めようとしているではないか。それならばとmacさんもウェットスーツを着始めた。
私は傘をさしてじょしゅさんの所に行き、

「俺が一人で潜るからじょしゅさんはいいよ。風邪ひくから止めなって・・。」

「私も浜まで降りてみたいから・・」


昨日といい今日といい、このじょしゅさんの行動力には恐れ入った。macさんがあっちへ行ったりこっちへ行ったりするのは、実のところこのじょしゅさんがリードして引っ張っているのじぁないだろうか。


さて、モズクがもし採れたらどこで食べようか、ホテル裏の見晴らし台のあずま屋にしようか・・
そこで新人2人が名案を出した。
[「ピアパークの奥の方に良い場所がありますよ。」
と言うので、soneta氏と三人で先に行ってキャンプの設営をしてもらう事にして、我々三人の決死隊は、ドシャ降りの中傘をさして、絶壁の下にある浜へと降りる小道に歩を進めたのだった。
その小道のすぐ横にある谷川も、普段はチョロチョロとしか流れていないが、この日はゴーゴーと音を立てて、膨大な量の雨水を絶壁の下に流れ落としていた。

波打ち際に降り立つと、不思議な事に雨足が弱くなって、気のせいか空も幾分か明るくなったように感じたのは私だけだったろうか。
どうせ海に入ってしまえば雨が降っていても関係ないのだが、空が暗いと海の底まで暗くなってしまって、それでなくても透明度が悪いのによけいに見えにくくなる。
雨が身体に当たって肌寒い。いつもなら、白馬縦走から栂海新道を降りてきた登山者がポツリポツリといるのだが、こんなひどい景色に、浜へ降りてくる猛者は誰一人いない。
しかもこんな景色にモズクを採りに潜るなんて、よっぽど物好きな変人としか言いようが無い。



着替えを入れたザックに傘をさして雨除けにして、海に入った。
どうだろう、水はそんなに冷たくない。風が当たらない分、水の中に入っている方がむしろ温かいくらいだ。

この場所には、今年に入ってからもう何度も潜っているが、今までで一番温かった。
遠めにはきれいに見える水も、いざ潜ると透明度は非常に悪かった。海面から1m下くらいまでは見えるものの、それ以上はボヤーっとしていて、底がどういうふうになっているのか皆目わからないのだ。

(2006-7-8撮影)

モズクは、岸から100mくらい沖合いで、4・5メートルの深さの底にゴロゴロと沈んでいる丸石に着く。なおかつ、川の水が流れ出る先でなければならない。
この辺りかな・・・と、一発目の潜り。しかしいきなり浅い岩礁に当たり、びっしりと着いた岩牡蠣が目に入る。
もう少し(10mくらい)沖にポイントを移動して2回目の潜りで、“宝物”を探し当てた。潮は岸から見て、右から左(東から西)にゆるく流れているが、それほど速くはない。

何度か潜っては採り、潜っては採りしてふと気付くと、何とじょしゅさんがすぐ傍に来てるじゃないか。

「あれ?ここまで来たの?」
「うん、何とか。肩が痛いから掻けなくて潜れないけど・・・」

とか言いながら、浮き輪が流れないようにアシストしてくれた。そのうちmacさんも寄って来て、3人で一つの浮き輪に掴まりながら、陸との位置関係を確かめる。
「海は、山を見て潜る。」のが鉄則である。あの山の、あそこの木の丁度前辺りとか、あの出っ張り岩の前とか、という具合にして自分の今いる位置を測る。

ひとしきり呼吸を整えて
「先に潜るから、後に続いて・・・」
「よし!」

macさんもついに、一握りのモズクを手にして揚がってきた。海底でモズクが生えている様子を自分の目で確認した様で

(2006-7-8撮影)

「わかった!、ああいうふうにして生えてるのか、びっしり真っ黒になって生えてたぞ!」と、声を弾ませた。

30分ほどの潜りで、みんなが食べるだけのモズクを採り上げると、次第にうねりが強くなってきたので、早々に引き上げる事に。炊事班が首を長くして待っていることだろう。

● モズクの味噌汁

モズクは、酢の物が一般的だが、採りたての生モズクは味噌汁で食べるのが一番美味しい。
それは、フワーンと匂い立つ磯の香りと強いヌメリ、シャキシャキの歯触りを、ストレートに味わえるからだ。

 軽く真水で洗う。(これだけで、ヌメリが出て泡立つ)
 包丁でざく切りする。
 一掴みのモズクをお椀に盛る。
 グラグラに煮立った味噌汁を注ぐ。

はい、これだけで、至福の味噌汁の出来上がりです。

ピアパークのキャンプ地では、先発炊事班が、我々狩猟班の到着を今や遅しと待ち受けていた。
しばし、雨中決行軍の武勇伝をレポートしながら、早速お目当ての味噌汁つくりに取り掛かる。


     

準備が出来た。
さあ、これから今OFF会のメインイベント、味噌汁を注いで、さっとモズクの色が青く変わる瞬間だ。
一番手は、sonetaさん。さっきから今か今かと、丼と箸を持って待ち構えている。
<モズク汁ムービー>   *(mac3カメラの動画は別途CDにて配布します)

ちょっと温(ぬる)かったのか、劇的に色が変わるというわけではなかったので、味噌汁に今一度火を入れて、グラグラと煮立ったやつを、今度はmacさんのに投入。今度は上手くいって、泡立ちも強烈だ。丼の中で見る見るうちに膨れてくる。





皆2杯ずつお替りして、一鍋完食したら、お腹が満たされた気分になった。
macさんが言ってたが、腹の中でも泡だって膨れるんじゃないのか?
ちょっと一休みして、デザートに今度はスイカをご馳走になった。

採れたての味噌汁は、そんじょそこらで食べられるもんではない。実際私も、浜でやったのは初めてだ。
来年はもっと究極の、「波打ち際で採れたて5分以内をズルズル」ってなくらい、これ以上ない贅沢をやってみたいもんだ。


自分で潜って採ってこそ、最高の幸せなのだ。
何故なら、海底の丸石にびっしりと着いてそよぐ、そのモズクの姿こそが、“宝物”なのだから。




こんな調子で、今回は天候の具合で、モズク以外の海の幸がなかった。という訳で、サザエを土産に持って帰りたいという、macさんの希望で、能生のマリンドリームの魚屋に行ってみることにした。
新人初参加の、柿の種・かやのんち両氏は、少し酒量が過ぎたため、しばらく休んでから・・というので、ここでお別れとなった。

そうしてマリンドリームの魚屋でしばし見物後、mac3&じょしゅさんは岐路に・・。
帰りがけに、macさんが言った一言

「また来るから・・・」

これがまさか、次の2回目のOFF会の布石であったとは、この時夢にも思わなかったのだ。
今考えると、この不完全燃焼にならざるを得ない悪天候が、
mac3さんを、原付ゴムボートの購入に走らせたのかもしれない。

8月4〜5日に続く(編集中)

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